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シェアブックス スタッフが送るたわいもない日記
  • 2022.11.01 曇り

    面白くて眠れなくなる植物学

よくBSNHKの自然をテーマとした番組とかを見ていると、植物が成長していく過程が映し出される。
例えば、蕾から満開の花が開くまで、数秒間の映像に編集されているものを誰もが一度はテレビ等で見た事があると思う。
最初は動画を撮って早送りしているのかなと思っていたが、調べてみると、定点カメラを設置し、ある一定の間隔で静止画を撮影して、それを編集して出来上がる「タイムラプス」撮影をしている事が分かった。
半年ほど前に僕はどうしてもそれを自分で撮影したいと思うようになり、カメラマンの友人に教えてもらって必要な機材を買い揃えた。
成功や失敗を繰り返しながら何度も撮影を行い、素材となる花や植物を求め、近所の花屋さんや園芸所を周る日々が現在も続いている。
撮影をしていると、花や植物の不思議を目の当たりにし、今まで考えた事もなかったいろんな気付きがあり、何故そうなるんだろう?という疑問も湧き上がってきた。
謎に満ちている植物の世界を僕はほとんど理解していない。
そこで、何かしらの植物の本を読んでみようと思い、今回手に取った本が題名の本。
計算式とかが出てくる難しい本を読んだりすると途中で断念すると思い、気軽に読めそうな入門書のような本を選んだ。

読んでみて印象に残った個所をいくつか紹介する。

自然界にはある規則性に基づいた数列が存在していて、その数列はフィボナッチ数列と呼ばれている。
人間が最も美しいと感じる比率を黄金比といい、その黄金比と密接に関係しているフィボナッチ数列。
不思議な事に植物はフィボナッチ数列に従って生存している。
植物の茎につく葉の位置はでたらめについているわけではなく、光が満遍なく当たるように、少しずつ葉の位置をずらしながらついていて、「葉序」と呼ばれている。
例えば360度の3分の1の120度ずつずれるものは、葉っぱを下から3枚数えると一周回って元の位置に戻ってくることになる。
180度や144度でずれるものもあるが、同じように下の葉っぱから数え、何枚で何周回って元の位置に戻ってくるかを計算すると葉っぱの角度が分かるようになる。
この分数の分母と分子はフィボナッチ数列で並んでいる。
僕は相場をやるので、テクニカル指標であるフィボナッチという言葉自体は知っていたが、植物の数列に関係しているとは知らなかった。
この数列はもはや芸術の域にあると感じた。

雑草は踏まれても何度でも立ち上がるというのは、人間が勝手に雑草を美化した解釈で、本当はそうではないらしい。
1度や2度は立ち上がるが、植物の目的は種子を残す事なので、踏まれて立ち上がる事にエネルギーを使うよりも、踏まれたままの寝た状態でも種子を残す事の方が大切。
踏まれても立ち上がらなければいけないという、いわゆる雑草魂は人間の幻想で、植物の生き方はそんな人間の情緒的な根性論よりもずっと合理的だと思った。

人類は草原で進化したと言われているが、固くて栄養価の少ないイネ科の植物の葉は、煮ても焼いても食べる事が出来ず食糧にはならなかったが、人類は葉ではない部分を食べだした。
イネ・小麦・トウモロコシ等、現在、人間が重要な食料としている穀物は全てイネ科の植物の「種子」だ。
栽培されているムギ類と野生のムギの違いは種子を落とすか落とさないかで、野生のムギは子孫を残すために種子をばらまくが、栽培されているムギは種子が落ちると収穫する事が出来ない。
野生の植物は全て種子が離れ落ちる「脱粒性」があるが、少ない確率で種子が落ちずに突然変異をする事がある。
人類はその突然変異をした株を見出す事に成功した。
自然界では種子が落ちない性質は子孫を残せない為、致命的な欠落だが、人類にとっては種子がそのまま残っていれば収穫して食料にも出来るし、その種子をまいて育てれば種子の落ちない性質のムギを増やすことが出来る。
種子の落ちない「非脱粒性」の突然変異の発見こそが、人類の農業の始まりで、革命的な出来事だったという事実はとても興味深く、毎日何かしらのイネ科の食糧を口にしている僕は、自然とは何かを深く再考させられた。

読みやすくて「なるほど~」と思う事や考えさせられるところも結構あり、植物が戦略的に生きていることを分かりやすく説明しているので読んで良かったと思ったが、いまいちユーモアに欠けるというか教科書を読んでいるようだったので、もう少し面白さが欲しかったというのが正直な感想。

本の冒頭にはゲーテの言葉が記されていた。
【天には星がなければならない。大地には花がなければならない。そして、人間には愛がなければならない。】

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