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シェアブックス スタッフが送るたわいもない日記
ノンフィクションや冒険記等の本を読んでいると、よく野生の熊や狼の話しが出てくる事がある。
以前から狼を題材にした本を読んでみたいと思っていて、今回手に取った本が
【狼の群れと暮らした男】ショーン・エリス著
「ロッキー山脈の森の中に野生狼の群れとの接触を求め決死的な冒険に出かけた英国人が、飢餓、恐怖、孤独感を乗り越え、ついには現代人としてはじめて野生狼の群れに受け入れられ、共棲を成し遂げた稀有な記録」

アイダホ州にある鬱蒼とした深い森の中へ、狼の群れを求めて最小限の物資だけを持ち、覚悟を決めて一人で命の危険も伴う旅に出る。
食べ物は現地調達で、ウサギやリスを罠にかけ、生肉のまま食す生活を強いられる。
最初の数週間は昼間に行動をしていたがなかなか狼を見つけられず、自分も狼と一緒の夜行性に変える必要があると考え夜間に行動するようになり、ようやく狼の足跡を見つけるまで2ヶ月半かかった。
そして初めて狼と接触したのがその足跡を見つけてからさらに1ヶ月半後。
だが狼はその後姿を現さず、次に会うのはまたさらに1ヶ月後となる。
その後は数日おきに姿を見せる様になり、夜間にはお互いが遠吠えを返す程の仲となって本格的な交流が始まった。
この狼は後に一緒に生活をする事になる群れの用心棒役で、人間である著者を群れにとって危険であるかどうかをずっと見張りながら偵察していたのである。
鳴き声・遠吠え・匂い付け・噛みつきが狼のコミュニケーション手段で、新参者を仲間と見なす為の儀式、噛む・嗅ぐ・匂い付けを頻繁に行い反応をじっと見てくるらしい。
特に噛む儀式は、膝の肉片が切り取られる程噛まれる場合もあり、出血や失神を伴う事もある。
この儀式に無事合格を果たすと、他の群れのメンバーに紹介され、最下位の狼として群れに受け入れられ生きていく事になる。
群れには以下の様にしっかりと役割が分担されている。

【アルファ】 群れの頭脳で意志決定者。獲物の選別もアルファが行い、獲れた獲物の一番栄養価の高い内臓は常にアルファペアのものとなる。非常に知能が高く唯一の繁殖が許される。
【ベータ】  攻撃タイプの用心棒で外部からの脅威に対応し、しつけ係も担う。
【ハンター】ハンターはオスより足の速いメスがなる場合が多く、アルファが決めた獲物を追跡し捕らえる役割。
【テスター】 品質管理役で群れのメンバーが仕事を完遂するように促し、もし仕事をしていない者がいればベータが罰を与える。
【中位~下位】見張り役。群れの安全を守る為、危険を早めに察知し警告する。
【オメガ】  群れの最下位。喧嘩の仲裁等を行い群れの安定を図る。

上から順にランク付けされていて、著者は最下位の狼として、群れの中で役割を与えられて生きていく。
もちろん食べる物も他の狼と一緒で、上位の狼たちが狩りをしてきた鹿や兎等の生肉をちゃんと運んできてくれ与えてくれる。
脅威となる熊が群れの近くに現れた時は、仲間の狼が察知し著者に警告し守ってくれる。
狼になりきって2年間共に暮らし、体中生傷だらけで22キロ体重が落ち、その間は勿論風呂も入れず、生肉だけの食事で心身ともに限界を感じて群れを離れる事を決意する。

後半で著者は飼育下の狼に野生の狼の生態を教える側に回ったり、恋人との関係性について書かれているが、やはり野生の狼と暮らした2年間の手記がこの本の見どころであり、読み物として圧倒された。
厳しく言うなら、読むのは前半の生い立ちと群れと暮らした2年間の章まででよかったかもしれない。

狼は犬の祖先と言われているが、多くの動物学者達は狼と犬は別の生き物で、これらを一緒の生態として考えるのは好ましくないと考えているが、その研究者達から異端児とされている著者は別の見解を主張している。
犬のしつけには狼の生態から学ぶ事が多いという著者の主張は学問的には実証が困難とされているが、やはり2年間も野生の狼の群れと暮らし直接的な観察をした人間からは説得力を感じる。
犬のしつけは暴力や威嚇を行わずに、罰を与える時は無視や冷淡さを前面に出して、精神的なペナルティを与える事が得策だと著者はいう。
多くの学者たちは著者の主張を認めていないというのも、研究対象である狼との距離感がまるで違い、全く異なる視点での研究をしているだろうから、まあそう思うのも仕方ないと思ってしまう反面、自分達が絶対出来ない著者の常軌を逸した偉業(行動)を妬んでいるのかなとも思ってしまう。

最初の読み始めの時は、この話は本当なのだろうか?と疑ってしまう程、現実離れした体験記だったので訝しげに読んでいたが、気付いたら嘘か本当かなんてどうでもよくなっていて、著者が狼達と一緒になって狩りで仕留めてきた生肉を貪り食う様を想像すると、その獣臭がリアルに漂ってくるようで、脳内を見事に活性化された僕は、気付いたら狼の生態に夢中になっていた。

僕がこの本で「狼」について分かった事は、「知的で気高く、力強くも愛情深く、群れの保持を第一とする非常に社会的な美しい生き物」という事だ。
翻訳は結構荒く、それ日本語としてどうなの?と思う部分も多少あるが、著者の狼に対する情熱と愛情は計り知れないものがあり、単純に面白かった。
何よりも自ら望んで狼の群れに入り込み、群れの一員として認められ、さらには2年間も養ってもらったという事実には本当に衝撃と感銘を受けた。
野生の狼に興味がある方にはお勧めしたい一冊だ。

1
買取してきた本の中で、とても興味深く面白そうな本があったので読んでみた。
その本とは「謎の独立国家ソマリランド」(高野秀行著)
皆さんはソマリランドと言う国をご存じだろうか?
僕はソマリアは聞いた事はあったが、ソマリランドと言う国があるのは知らなかった。
そのソマリアについて知っている事といえば、海賊のイメージとブラックホークダウンという戦争映画の舞台が確かソマリアだったな~という位の浅い知識だった。
この本を読み終えた後は、僕のソマリア、いやアフリカに対する印象がガラッと変わった瞬間だった。

この本では、【謎の独立国家ソマリランド】【海賊国家プントランド】【リアル北斗の拳の南部ソマリア】と大きく三つの地域に分けて話は進んでいく。
この謎すぎる国に著者が持ち前の行動力と運を武器に4年に渡る長期取材をしていき、さらには無謀ともいえる危険な地域への取材を進めていく様は読んでいて痛快で、自分の知らない環境と文化に驚きの連続だった。

【ソマリランド】
ソマリアは一つの国ではなく複数の連邦構成体が分裂状態にあり、飢餓・内戦・海賊等の様々な問題を抱え、政府の腐敗度を示す腐敗認識指数では北朝鮮と並び最低評価をされている国だ。
そんな無政府状態の崩壊国家と呼ばれているソマリアの一角に、10年以上も平和を維持している独立国家がソマリランドで、日本と同等くらい平和で民主的なこの国を、著者は「天空の城ラピュタのような国」と称している。
ソマリ人の特徴は、黙っている大人しいソマリ人は殆どいないらしく、まくしたてる様に自分の好きな話をし、興味が無くなるとさっさと次の話題に移り、自己主張と交渉力がべらぼうに強く、日本人とは真逆の人種らしい。
だが意外にもテキパキと行動して仕事が早く、陽気で人当たりも良く、ホテルのサービスなんかもかなりいいようだ。
ただその機敏な動きで仕事をしているのは、本を読み進めていくと「カート」(覚醒植物)のせいだなというのが丸分かりになっていく。
イスラム教なのでお酒は全くないのだが、このカートは大半のソマリ人が日常的に使用している様で、ソマリランドには日本の自動販売機並みにカート屋台が並んでいる。
そのカートを常用しながら地元民の生活にどっぷりと入り込み親交を深め、ソマリ人以上にソマリ人の様な動きをする変な日本人と地元民はより密接な関係を構築し、本音で奥深い話しをしてくれる。
この様な事を書くと眉をひそめる人もいるかもしれないが、これがこの国の現状でライフスタイルとして確立されていて、日本で皆がワイワイお酒を飲んでいるのと何ら変わりはない。
ソマリランドにはソマリランド・シリングという独自の通貨が存在し、軍隊や政府、さらには民主的な選挙もあり、治安も良く平和を維持し続けている国家なのだが、国際的に国とは承認されておらず、その為「謎の自称独立国家」の位置づけとなっている。

【プントランド】
プントランドは正に我々のイメージにある「ソマリア=海賊 」の舞台である海賊国家だ。
最大の町ボサソは「海賊の首都」と呼ばれ海賊マネーで潤っていて、小綺麗な建物が並んでいるのだが、外国人は武装した護衛なしではすぐに拉致をされて、お得意の身代金問題に発展するようだ。
ソマリランドでは護衛等は必要ないが、さすがの著者もここからは地元のジャーナリストと兵士を複数人雇って取材を行っている。
そのジャーナリストの知り合いの海賊にホテルで取材をしているのだが、ここの話しがとてもリアルで面白かった。
仮に海賊を雇ってドキュメンタリー映像を撮るとしたら費用はどの位かかるかをその海賊に聞いてみると、ボート代・人件費・マシンガンやバズーカ砲のレンタル代・通訳・食費等の初期費用で約5万ドル。
身代金は約100万ドルで成功すると地元の有力者に40%程の謝礼と、細部にわたり細かく料金設定が組まれてある。
にわかには信じがたいが、こんな海賊ビジネスが横行しているという。
そう、この地域での海賊はビジネスなのだ。この事実には目から鱗が落ちた。
イスラム過激派とは何も関係がなく、このプントランドでは普通の漁師やちょっとやんちゃな若者達が、このビジネスに参入しているようだ。
いい家に住み、いい車に乗り、綺麗な女性を連れているロールモデルとなる先輩の海賊達がいて、ここの若者はそんな先輩達に憧れているという。
環境といえばそれまでだが、日本ではお笑い芸人やユーチューバーになりたいと言っている若者達とは大違いだ。

【南部ソマリア】
南部ソマリアモガディシュは内戦下にあるリアル北斗の拳の世界だが、町は意外にも栄えており、ネットカフェ・家電ショップ・レストランが軒を並べていて、今まで立ち寄ってきた街とは比べ物にならない程繁栄している。
だが一番危険な地域の無法都市には変わりなく、外国人はいつ誘拐されてもおかしくないような状況らしい。
護衛はもちろんで移動も装甲車に変わり、続編では乗っていたその装甲車がイスラム過激派アル・ジャバーブの襲撃に遭い、命を落としてもおかしくない状況に陥ったことも。
繁栄と危険が調和している、とてもエキサイティングな町だ。
ここにはテレビ局もあり、そのモガディシュテレビ局の敏腕女支局長ハムディが出迎えてくれている。
二十歳そこらの彼女は意外にもソマリ人とは思えない上品さがあり、おもてなしの心を持ち合わせていた。
歳は若いが知的でバイタリティーに溢れていて、毎日アル・ジャバーブ支配下の場所から見つからない様に暫定政権エリアのテレビ局に出勤し、戦闘やテロを取材してVTRを作り、自分もニュースを読み、またこっそりと敵地へと戻っていく。
このハムディとのくだりが、ここの南部ソマリアの若者を代表する思考と行動であり、新鮮で面白かった。

本を読み終わり何とも言えない達成感に浸っていた僕は、ふと家のテレビを付けてみると、どこぞのワイドショーが誰々が不倫しただのを永遠と垂れ流していて、平和ボケしまくっている日本のテレビに辟易したが、この薄っぺらい内容を放送しているそれこそが平和で幸せな国なんだなと思ってしまった。

文体はユーモアもあり軽快だが、内容は民族紛争の本質に迫っていると思う。
ただ著者は氏族について日本の戦国時代の武将に当てはめていて、分かる人には氏族の関係が把握出来ると思うが、日本の歴史教養が無い僕には本当にざっくりしか把握する事が出来なかった。
分家が多くかなり複雑で一度の通読で完全に把握出来た人は、かなり読解力がある人だと思う。
僕にはこの武将の当てはめは、かえって分かりにくくなったので、1ページを使って簡潔に表の様なものを掲載してくれれば良かったのにと思った。

500ページを超す分厚い本を手にして一瞬読むのを躊躇したが、読んで良かったと思う。
ソマリ人の価値観が手に取るように分かり、凄くエキサイティングな国で、その魅惑の国家を愛してしまった著者の渾身の1冊。
旅行記感覚で読めて著者のソマリランド愛がよく分かり、この1冊を読むだけでソマリアの全てが分かると言っても過言ではないだろう。
最近はソマリア関連のニュースが流れると、この本で培った知識と照らし合わせながら、食いつく様に見てしまう 笑
一生行く事はないであろう紛争地域の内情が分かる本で、自分の知らない世界がまた一つイメージ出来るようになった。 興味がある方は是非一読を。

2
2018年にノンフィクション大賞を取っている、「極夜行」角幡雄介【著】を読んだ。

【あらすじ】
白夜の反対で日が昇らない時期が数ヶ月続く漆黒の闇を極夜といい、グリーンランドにある地球最北の村シオラパルク(北緯78度)よりGPSなしで一頭の犬だけを連れ添い、単身で4ヶ月間探検をするという内容。
マイナス40℃に達する極寒の光のない暗黒の地で何度も現在地を見失い、幾度となくブリザードに強襲され、デポしていた食料を全て白熊に荒らされて常に食糧難で行動するなど、次々に降り注ぐ困難な状況下で進んでいく。
普段は月明かりだけが頼りで月光のみで行動するが、頼りの月も出ない日は真の闇が訪れる事になる。
ナビゲーションの要となる六分儀を失い、その後は地図とコンパスのみで極夜を進む事となる。
常に命の危険が伴う圧倒的な大自然を計4ヶ月間、その内80日間の真の闇を体験し、その極夜明けの太陽を見て何を思うのか。
読む者を強烈に闇の世界へ誘いこむ極限のサバイバルノンフィクション作品。

【感想】
未知の空間を見つけるのが難しくなってきた現代で「極夜」という見事なテーマの冒険を選んだ著者にセンスを感じ、題名だけで読んでみたいと思った。
この本で白夜とは異なり、日が昇らない極夜という存在(空間)がある事を初めて知った。
スタート地点のグリーンランドシオラパルク先住民族のイヌイットは、1818年に部族以外で初めて見る外の世界から来た探検隊に対し、「お前は太陽から来たのか。月から来たのか。」と尋ねたらしい。
イヌイットは太陽と月という恩恵も厳しさも最大限に受ける過酷な地に存在し、シンプルだが生命体の本質はこういう事かなと感じた。
旅の目的はどこかに到達する事ではなく、極夜という特殊環境そのものを体感する事にあり、僕の知らない未知の空間と闇の本質に迫る本書にぐいぐい引き込まれていった。

著者は冒険とは「脱システム」という持論を掲げて冒険している。
本の中で印象に残った一文を

「毎日、太陽が昇り、夜は人灯灯にかこまれ、常時、明かりの絶えないシステムの中で暮らす現代人にとって、二十四時間の闇が何十日間もつづく極夜は想像を絶する世界であり、完璧にシステムの外側の領域である。わけの分からない世界である。
極夜世界においては、極夜そのものが未知であるのはもちろんのこと、極夜に付随する諸々もまた現代人にとっては未知である。現代人は常に明かりにかこまれ、人工的に発生させたエネルギーで文明生活を享受し、その意味で知覚能力および感受性が鈍磨しているため、夜、昼、太陽、月、星、光、闇といった現象や天体の本質的な意味が分からなくなっている。下手すれば、それらは生活の中になくても困らないんじゃないかとさえ考えられるようになっている。
だが、極夜世界では現代システムでは非本質的とみなされるようになった光や闇や天体といったものが、本質的存在として私の旅の継続の、もっといえば私の命の鍵を握っている。
もし私が今度の旅で現代システムからうまく外に飛び出して、極夜世界に入り込むことができれば、それは現代人にとって無意味なものとなり果てた夜や昼や太陽や月や星や、そしてそれらを総合した光と闇の意味を知る旅になるはずだ」原文ママ

地球上にこんな場所があるのかと、さらに自分では考えもつかない著者の持論が、東京というシステムのど真ん中で生活している僕の胸に突き刺さった。
日常の大部分をテクノロジーに依存して、本来人間が持っている能力が錆付いていっているのさえ感じ取れぬまま生活している。
まあ、それは普通に生活をしていれば仕方がない事なのだが、こんなにもハッとさせてくれて気付きがあった本は久しぶりだった。
僕にはそんな命を懸けた冒険は肉体的にも精神的にも到底無理な話だが、自分にテーマを課し、極限状態を体感し、表現している著者を羨ましく思った。
僕は温々としたとても快適な部屋で本を読んでいるが、この手の本は主人公が窮地に追い込まれる程、読み手としては面白くなってくる。
悲惨な体験をしてもらえればもらう程、面白く感じてしまうのが人間の性なのだ。(自分だけかもしれないが)
その点でいうと逆境と絶望の連続で、もしかすると犬は最悪な結末を迎えるかもしれないなと思いながら終始スリリングに読めた。
人によっては読むのをやめてしまうかもしれないような下品と感じるような表現もあり、好き嫌いはあるかもしれないが、僕は知的でユーモアがあり読者に媚びていない文章が面白いと思った。

本には写真が全くないので文章から想像するしかないが、文章表現が素晴らしく、僕の頭の中ではページをめくるたびに鮮明に描写する事ができた。
想像してほしい、人工物が全くなく、生物の気配すらないマイナス40℃にも達する静寂の暗黒世界の中で見る月を。
メインテーマである極夜は勿論だが、それ以外でも犬と人間の関わりかたや、狼と犬との著者の考察も面白かったし、月と天体の描写等、全てにおいて哲学的で面白かった。
寝食を共にし、いくつもの難問を一緒に潜り抜け、一心同体であるはずの最大のパートナーである犬ですら最悪の事態では食料にしようと計算していたのが、心身ともに極限状態だったのを象徴していた。
極夜の旅が終わった時に感じたのは喪失感だったらしいが、それもまた納得だった。
本を通じて、壮大で見事な極夜の世界へ僕を連れ込んでくれた著者に感謝したい。

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↓おまけ↓4ヶ月ぶりに見る極夜明けの太陽の動画があったので貼っておきます↓

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