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シェアブックス スタッフが送るたわいもない日記
現在の日時は10月12日(土)19:35、避難所でスマホのメモ帳にこれを書き始めた。

今日は朝から買取が入っていたが、台風の為、臨時休業する事にした。
近所にある全てのコンビニは既に閉まっていて、もう何も買う事は出来ない。
テレビでは盛んに命を守る行動を取るように何度も促している。
又、川の様子は決して見に行かないでとの警告も頻繁に流れていた。
しかし、僕の自宅は多摩川沿いにある為、警告をよそに何度も川の様子を見に行った。

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目の前の川の状況が気になって仕方ないのだ。
普段の優美な多摩川の姿はもうそこにはなく、荒々しく攻撃的な川へと変貌していた。
最初に見に行った時は近所の人もチラホラ見かけたが、夕方になるとまるで人気がなく、近隣の車庫からは車が消え、皆何処かに避難してるように感じられた。
僕はこの時点でも避難所に行く事はさらさら考えていなかったが、家の2階から川の状況を確認する度に、氾濫の恐怖と孤独感に苛まされていった。
取りあえず車だけは非難させておこうと田園調布駅近くの駐車場に停めに行く事にした。

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駅に行っても殆ど人と会う事はなく、電車も止まっており、非日常感がひしひしと伝わってくる。
辺りも薄暗くなってきて、雨風がかなり強くなってきた頃には、携帯電話に緊急避難のアラートが頻繁に鳴るようになり、家の周りをスピーカ付きの車が避難を呼びかけはじめた。
17時頃、最後に川の様子を見に行ったら、水位が急上昇しており、荒れ狂って暴れている多摩川の様子を見て恐怖を感じた僕は、高台で駅の近くにある小学校への非難を決意した。

避難するつもりは無かったので何も用意をしていない。
僕は40Lのザックに、着替え・タオル・寝袋・ガス・洗面用具・食料・水・ライト・充電機器を素早く詰め込み、登山用のレインウェアを上下に着用し、ハイカットの登山靴を履いて自宅を後にし、高台にある避難所を目指した。
雨風は既に激しく吹き荒れていて、おそらく傘は何の役にも立たないだろう。
小学校に近づくにつれ、次第に荷物を持って歩いてる人達が増えていき、到着すると受付に列が出来ていた。
名前・住所・年齢を書き込み、指定された場所まで行くと既に人で埋め尽くされていた。
廊下にも多くの人が横たわっていて、キャパオーバー感は否めなかった。

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仕方なく他の場所に行き、下駄箱の一角を確保する事が出来た。
1人だったので丁度良いスペースで、しかも壁で隔離されていてたので、僕だけ個室みたいになっていて意外と快適に過ごす事が出来た。

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周りを見渡すと家族しかいなく、1人で避難してきたのは僕だけではないだろうか。
地域柄そういう事なのだろうが、こういう時は独身ならではの孤独感を感じてしまう。
場所を確保してから避難所内の事を把握しておこうと思い、校内をうろついていたら腕章を付けた係の人が災害用のマットを膨らましていた。
便利な物があるなと思い、声を掛けて一緒に膨らましていたら、何故かそのままマット膨らまし係に就任する事になった。

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20時頃には気象庁が警戒レベル5を発令して、台風もより激しさを増してきた。
朝からあらゆる各地にいる友人達から心配の電話やメールが届いているが、それは今も鳴り止まない。
数年ぶりに連絡が来た友達もいたりして、そこで初めて、「あー自分は今、被災しているんだな」と、強く実感した。

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暴風雨の轟音が断続的に不気味かつ不穏な音で被災者の不安を煽ってくる。
さらに追い打ちをかけるかのように、体に揺れを感じる地震が来た時は、学校内がどよめいた。
地震きっかけで近くにいたおじさんと会話をするようになり、僕が生まれる前の多摩川水害の話をしてくれた。
23時にもなると雨も風も落ち着いてきたように見えたので、受付に行き状況を確認したら、多摩川は夜中の放流があるかもしれないのと、僕が住んでいる地区は既に浸水被害が出ていると言われ、その日の帰宅は断念して寝袋に身を包み、静かに目を閉じた。
朝5時に目が覚め、身支度をして帰ろうとしたら、受付の人が「自宅は入ってませんか?」と、現時点の避難指定の紙を持ってきた。
自宅の番地が思いっきり記載されていたが、「一度帰ってみて駄目そうならまた戻ってきます」と言い残してお世話になった小学校を後にした。

朝の多摩川の水位は普段よりかは上昇しているものの、幾分穏やかさを取り戻していたので少し安心し、朝日が昇り始めたその美しい光景をしばらく眺めていた。

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自宅前の道路は足首辺りまで水がきており、靴を脱いでジーンズを捲り上げて家の中に入った。

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玄関を開けると土間は泥で真っ白になっていて、ここまで浸水していたのかと驚愕した。
しかしギリギリのところで廊下や部屋には浸水しておらず、これがいわゆる床下浸水というやつだなと頭にインプットして、疲弊していた僕はそのまま布団に倒れこみ眠りについた。

今回、被災したおかげで、地域や近所の人達とコミュニケーションを取る事が出来た。
災い転じて福となすといったとこだろうか、これは本当に良かったと思う。
同時に川の近くに住むという事を深く考えさせられた。
この大都会の東京において、多摩川というのは僕にとってオアシスであり、解放感があってゆっくりとした生活を送れる地域だと思っている。
この13年で4回引っ越したが、その内3回は多摩川の近くに住んでいる。
普段は最高に気持ちよく住みやすい環境だと思うが、今回は川の近くに住むデメリットを痛感させられる形となった。
「多摩川愛」が少し揺らいだ台風19号だったが、台風一過の今日の晴天を、この河川敷から目の当たりにすると、10年後も東京にいるのであれば、きっと多摩川の近くに住んでいるんだろうなと思っている。

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